やめてくれ、やめろ、やめてくれ嫌だ違う違う違う違う違う
アタシはただ、祖国の為に。
愛国者として、国の為にしているだけだ。
間違っていない、アタシは間違っていない。
やめろ、アタシに怨みの言葉を投げつけるな。

アタシは間違っていない。間違ってなど………!!!

 

「アコモさん、アコモさん!!!大丈夫ですか、アコモさん!!」

 

若い青年の声に、目が覚めた。
目を開いたことで見えた光景は、あの地獄のような水の中ではない。
あまたの腕があったわけでもない。
いつも通りの、今住んでいる部屋だ。
見える青年も、心配そうにしている眼帯の中性的な人も、私が知っている者たちだ。

 

「大丈夫ですか?酷くうなされていたが」

 

うなされていた、ということは。どうやら、アタシは眠っていたようだ。
いつも通り、徹夜で書類を作成していて、それからの記憶がない。
恐らく、睡眠不足で倒れて、眼帯の彼女に運ばれたのだろう。

 

「……ああ、大丈夫。迷惑をかけたね」
「よかったぁ…もう、徹夜はダメですよ!いつかぽっくりいっちゃうんですから!」
「…はは、気を付けるよ。ニールくん」

 

若い、金髪の青年…ニールはほっとしたような表情を浮かべ、そういった。
アタシは、いつも通り、いつも言っている言葉を放つ。
……魔法と呼ばれる、この国独自の技法。
アタシの祖国、アタシの愛する「トメニア」では、見ないものだ。
この国はとても生ぬるい。
化け物共と共存し、素晴らしき亜人と同等の存在であろう魔術師たちは、
国が勝つためではなく、国を平和にするためとほざいて無駄にする。
スパイとして、幾数年をこの国で過ごすうちに、悪夢がアタシを襲い始めた。
ここにいる化け物の仕業だろうと、いつも思う。

 

「…しかし、アコモさんは何故あそこまで追い込んで仕事をしているんですか?」
「…はやくマクガフィンを見つけないといけないという焦りだよ。私は、腕をなくして、子供を巻き込んでしまったから」

 

いつものように、嘯いた言葉を放つ。
何が腕をなくしただ、「自ら」差し出したのに。
なにが子供を巻き込んでしまっただ、

モルモットにするために、わざと巻き込んで引き取るように画策したのに。
……ああ、ダメだ、あんな夢を見たせいで、

柄にもなくつらいという錯覚を覚えてしまっている。
何を迷うことがある、こいつらは切り捨てるべき愚かな蛮族だ。
我らがトメニアに支配されるべき異民族だ。
なぜ、なぜアタシは、彼らに、彼女たちに、心配されることをうれしいなどと錯覚しているのだ。

 

「……そうだな、けれど、やはり無理をしては意味はないと思いますよ」

 

やめろ、やめてくれ。
貴様たちは切り捨てるべき蛮族だ。
我らが崇高なるトメニアのためのいけにえだ、優しくするな、アタシを惑わすな。

 

「……ありがとう、君たちの言葉がうれしいよ」

やめてくれ、あたしは、この生ぬるい世界に、つかりたくない